私はただ、『らしくあった』だけなんです。子どものときは子どもらしく、軍人のときは軍人らしくしたのです。いまの日本で変だな、とぼくが思うことは、人々が『らしく』生きていないということです。親が『親らしく』、先生が『先生らしく』いるだけでずいぶんわかりやすくなるはずなんです。難しいことじゃないですよね。いまやっていることはとっても不自然に見える。
戦前、人々は「命を惜しむな」と教えられ、死を覚悟して生きた。戦後、日本人は「命を惜しまなければならない」時代になった。何かを“命がけ”でやることを否定してしまった。覚悟をしないで生きられる時代は、いい時代である。だた、死を意識しないことで、日本人は「生きる」ことをおろそかにしてしまってはいないだろうか。
( 「たった一人の30年戦争」より )